口腔筋機能療法(MFT)

院長よりひとこと

当院では、歯並びを整えるだけでなく、口腔機能の改善にも重点を置いて治療を行っています。口腔筋機能療法(MFT)は、正しい舌の使い方や嚥下の習慣を身につけることで、矯正治療の効果を高め、後戻りを防ぐために非常に重要な役割を果たします。

特に、小児期から適切なトレーニングを行うことで、顎の健全な成長を促し、将来的な歯並びの乱れを予防することが可能です。MFTを通じて、お子さまの健やかな成長をサポートできるよう、専門的な指導を提供しております。

お子さまの歯並びや口腔機能についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。


口腔筋機能療法(MFT)とは?

口腔筋機能療法(MFT:Myofunctional Therapy)は、舌や口唇、頬の筋肉の機能を正常化し、正しい口腔習癖を身につけるためのトレーニングです。特に、小児矯正において歯並びの改善や後戻り防止に有効とされています。

近年、口腔機能の発達が歯並びや噛み合わせ、さらには呼吸や発音に影響を及ぼすことが明らかになっており、矯正治療と併用することでより良い治療結果が得られることが多くなっています。

歯並びの悪くなる原因

歯並びが悪くなる要因は複数ありますが、主に以下のような原因が挙げられます。

1. 遺伝的要因

  • 顎の大きさや形、歯の大きさは遺伝の影響を受ける。
  • 親が歯並びに問題がある場合、子供も影響を受けやすい。

2. 口腔習癖

  • 指しゃぶり:長期間続けると、出っ歯や開咬の原因になる。
  • 舌突出癖:嚥下時に舌が前歯を押すことで、開咬や上顎前突を引き起こす。
  • 頬杖:顎の成長を歪め、左右非対称の歯並びを招く。
  • 口呼吸:舌が正しい位置に収まらず、顎の発育に悪影響を与える。

3. 不適切な食生活

  • 柔らかい食事の摂取が多いと、咀嚼力が低下し顎の発育が不十分になる。
  • 咀嚼回数が少ないと、顎の成長不足により歯がきれいに並ばない。

4. 乳歯の早期喪失

  • 乳歯が早く抜けると、永久歯の生えるスペースが確保できず、乱れた歯並びの原因になる。

5. 不適切な舌の位置

  • 低位舌(舌が下がった状態)では、歯列が狭くなり、歯並びの乱れを引き起こす。
  • 舌の力が不足すると、正しい顎の成長が妨げられる。

6. 生活習慣や姿勢の影響

  • 姿勢が悪いと、頭の位置が前に出て口周りの筋肉バランスが崩れる。
  • 睡眠時の姿勢が悪いと、顎の発達に影響を及ぼす。

歯並びが悪くなる原因を理解し、早期に適切な対策を講じることで、より良い歯列と咬合の発育を促すことができます。

MFTの目的

MFTは、単に歯並びを整えるだけではなく、以下のような目的を持っています。

  1. 舌の正しい位置を習慣化する
    • 舌が低位(低い位置)にあると歯並びに悪影響を及ぼす。
    • 正しい舌の位置(スポット)を覚えることで、適切な歯列の発育を促す。
  2. 口呼吸を改善し、鼻呼吸を促す
    • 口呼吸は歯並びの乱れや健康問題の原因となる。
    • MFTによって口周りの筋肉を鍛え、口唇を閉じる力を高める。
  3. 嚥下癖を改善する
    • 舌突出癖(舌で前歯を押す癖)があると、開咬や出っ歯の原因になる。
    • MFTによって正しい嚥下方法を習得し、歯並びへの悪影響を防ぐ。
  4. 発音を改善する
    • 舌の位置や口唇の動きが正しくないと発音に影響を及ぼす。
    • 特にサ行、タ行の発音が不明瞭な場合にMFTが有効。

MFTが必要なケース

MFTは以下のような症例で特に推奨されます。

症例 影響 MFTの役割
低位舌 歯列の狭窄、開咬 正しい舌の位置を習慣化
口呼吸 口腔乾燥、虫歯・歯周病のリスク増加 鼻呼吸への移行を促す
舌突出癖 開咬、上顎前突 正しい嚥下方法を習得
口唇の閉鎖不全 出っ歯のリスク増加 口唇の筋力強化
発音障害 サ行・タ行の発音不明瞭 舌の動きを改善

MFTのトレーニング内容

MFTでは、以下のようなトレーニングを行います。

1. 舌の正しい位置を覚える

スポットポジションの習得

  • 舌を上顎の適切な位置(スポット)に置く練習。
  • 舌を上顎に押し付ける動作を繰り返し、舌筋を強化。

2. 口唇閉鎖トレーニング

ストロー訓練

  • ストローを使って吸引力を高め、口唇を閉じる力を強化。
  • リップトレーナーを用いた訓練も有効。

3. 正しい嚥下の習得

嚥下訓練

  • 舌をスポットに置き、口唇を閉じた状態で嚥下する練習。
  • 「ムー体操」などを活用し、正しい飲み込み方を覚える。

4. 呼吸改善トレーニング

鼻呼吸の習慣化

  • 口テープを用いた夜間トレーニング。
  • 鼻腔の通気性を向上させるためのエクササイズ。

5. 発音トレーニング

サ行・タ行の発音改善

  • 舌の位置を意識しながら、明瞭な発音を繰り返し練習。
  • 鏡を見ながら正しい舌の動きを確認。

MFTと矯正治療の関係

MFTは単独で行うものではなく、矯正治療と併用することでより大きな効果を発揮します。

MFTを併用するメリット

  • 矯正装置による歯の移動をスムーズにする。
  • 矯正後の後戻りを防ぐ。
  • 口腔機能の正常化によって、長期的な安定した咬合を維持できる。

まとめ

口腔筋機能療法(MFT)は、単なる歯列矯正ではなく、根本的な口腔機能の改善を目的とした治療法です。正しい舌の位置、口唇閉鎖、嚥下、発音を身につけることで、健康的な歯並びと機能的な咬合を維持できます。

矯正治療と組み合わせて行うことで、より確実な治療効果を得られるため、MFTの導入を積極的に検討することをおすすめします。