矯正歯科治療にはどんな種類がある? ~ 治療を受ける歯科医院選びのポイント等も解説

矯正歯科治療にはどんな種類がある? ~ 治療を受ける歯科医院選びのポイント等も解説

矯正歯科治療は、歯並びや噛み合わせの不正の改善を目指す治療です。矯正治療の方法には複数の種類があり、種類によって治療中の見た目や処置に伴う痛み、治療期間などが変わるため、事前に正しく理解しておくことが大切です。はじめに、矯正歯科治療の基礎知識やきれいな歯並びのポイントを確認しましょう。

矯正歯科治療の基礎知識

成人の歯並びの不正を治療する成人矯正では、顎の骨の発育を正常に促す小児矯正とは方法が異なります。歯列矯正では、さまざまな装置を使って、歯の傾きや生えている位置などの歯列不正を改善していきます。

きれいな歯並びのポイント

矯正歯科治療では、出っ歯や受け口、乱ぐい歯といった乱れた歯並びがきれいなU字型を描くように、装置を用いて力を加えていきます。親知らずを除くと全部で28本ある永久歯を単に整然と並べるだけでは、正常に機能する歯並びは手に入りません。見た目だけを良くした歯並びは、使っていく中でまた乱れていってしまうのです。歯並びが整然と揃うだけでなく、上下の歯列が正しい位置で噛み合う位置に矯正することが重要です。正常な歯並び・噛み合わせとして評価されるポイントとしては、上下の正中が一致している、左右対称である、Eラインが美しいことなどが挙げられます。 

矯正歯科治療の種類

表側矯正

表側矯正は、歯列の表側にブラケットとワイヤーを固定する矯正方法です。矯正歯科治療で一般的な治療方法といえるでしょう。1歯1歯のブラケットの接着位置を工夫したり、ワイヤーにさまざまな細工を施したりすることで、歯を三次元的に動かします。表側矯正は、ほとんどの歯並びに適応できますが、デメリットもいくつかあります。装置が目立ちやすく、ワイヤーが口腔粘膜を傷つける恐れがあったり、歯の移動に伴う痛みが強かったりなどです。また、食事や歯磨きがしにくく、1ヶ月に1回程度は通院しなければならないといった点にも注意が必要です。

裏側矯正(舌側矯正)

裏側矯正(舌側矯正)は歯列の裏側にブラケットとワイヤーを固定する矯正方法で、舌側矯正(ぜっそくきょうせい)と呼ばれることもあります。専門的な知識と高度な技術が必要になることから、施術できる歯科医師が限られたり、治療費用が高額になることがあります。外から見て矯正治療中であることが気づかれにくい、歯の表面に比べて裏側の方がエナメル質が厚いため装置を外すときにエナメル質を傷つけにくい、歯の裏側は唾液が循環しているため歯周病やむし歯になりにくいといったメリットがあります。ただし、装置が歯の裏側に付いているため滑舌に影響が出る、表側矯正よりも治療期間が長くなるなどのデメリットもあります。

マウスピース型矯正

透明なマウスピースを使った矯正方法です。装置が目立ちにくく、装着感も良いといわれています。自分で装置を取り外せるため、食事や歯磨きを普段通りに行えるという点もマウスピース型矯正のメリットとして挙げられます。一方でデメリットとしては、適応範囲がワイヤー矯正よりも狭いため、症状によっては治療を受けられないことがあります。また、定められたマウスピースの装着時間を守るように自己管理しなければならず、装着時間が短いと歯が想定通りに動かないため治療期間が長くなることがあります。

部分矯正

歯並びの一部分だけを治す方法を部分矯正といいます。一般的には、目につきやすい前歯の部分矯正を希望する人が多いです。部分矯正は、装置をつける範囲が狭く、歯を動かす距離も短いため、全体矯正に比べて短期間で終わらせることができます。治療費用も全体矯正よりも安く抑えられます。一方で部分矯正には、適応できないケースがあることや、噛み合わせまでは改善できない、歯の接触面を削ったり歯を抜く場合があるなどのデメリットを伴います。

インプラント矯正

インプラント矯正とは、歯科矯正用アンカースクリューというチタン製の小さな医療用のネジを使用する歯並びの治療のことです。ネジを顎の骨に埋め込み、歯を引っ張る固定源として歯を動かしていきます。インプラント矯正には、動かしたい歯だけを動かすことができる、抜歯せずに矯正できる可能性が高まる、従来の方法では難しかった方向に歯を動かすことが可能になる、などのメリットがあります。デメリットとしては、簡単な外科処置が必要になる、適切にケアしないとネジの周囲で炎症が起きることがある、緩んだり抜け落ちたりした場合に再埋入する必要があるといった点が挙げられます。

矯正歯科医院の選び方のポイント

日本矯正歯科学会の認定医が在籍している

日本矯正歯科学会の認定医とは、5年以上日本矯正歯科学会に所属すること、5年以上専門的に矯正歯科に従事すること、学会の認めた刊行物に矯正歯科臨床に関する論文を発表すること、学会の試験に合格することなどの厳しい条件を満たした歯科医師のことです。日本矯正歯科学会の認定は、矯正歯科医師としての経験と知識、技術を学会に認められているといえるため、安心して治療を受けることができるでしょう。

複数の矯正装置を用意している

前述したように、矯正歯科治療の方法には複数の種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。各治療法に適した症例にも違いがあるため、複数の治療法を選択できる歯科医院で治療を受けることが望ましいです。さまざまな矯正治療の方法に精通している歯科医院には、矯正歯科治療の経験が豊富な歯科医師が在籍している可能性が高いです。そのような歯科医師は、精度の高い安全な矯正治療を提供してくれるでしょう。

先進設備を整えている

適切に矯正治療を行える歯科医院では、セファログラムや口腔内スキャナー、歯科用CTなどの先進的な設備を取り揃えていることが多いです。これらを用いることで、より精密な矯正治療を実現し、検査や治療の際の患者さんの負担を軽減しています。 

先進設備の例

歯科用CT

歯や顎の骨を三次元的に検査できる装置です。歯科用CTによる精密検査を行えば、歯根の形や向き、顎の骨の厚みなども精密に把握できるため、適切な治療計画を立案できるようになります。それにより、矯正治療中のトラブルなども予防しやすくなるといえます。

セファログラム

矯正治療専用のレントゲンです。歯列や顎の位置、骨格の成長の変化や歯の移動状況などを分析するために使用されます。治療前の診断に必要な顔のデータに加えて、術前と術後を重ね合わせてどのように歯が移動したか、歯が動いたことによる口元や顎、顔貌の変化などを比較することができます。

口腔内スキャナー

口腔内スキャナーは、口の中を光学スキャンすることで歯の形状をデジタル画像で再現するための機器です。これにより従来の歯型取りに比べて、より快適かつ精密に、短時間で、口の中の情報を採取することができるようになりました。マウスピース型矯正治療では、この精密なデータを用いることで精度の高いマウスピースを作製することが可能になります。